世界発酵コスメティクスマーケット現状分析レポート
- Teru Hirooka
- 1月9日
- 読了時間: 11分

エグゼクティブサマリー
発酵コスメティクス市場は急速な成長段階にあり、2024年のUSD 1.5~1.6 bilionから2033年にはUSD 3.2~3.7 billionへ拡大することが予想されており、年平均成長率(CAGR)は8.2~9.1%です。特に東アジア市場(日本、韓国、中国)は全体成長をけん引する最重要地域であり、消費者のクリーンビューティー志向、スキンマイクロバイオーム研究への関心、および科学的検証への需要が急速に高まっています。
第1章 グローバル発酵コスメティクス市場の現状
市場規模と成長予測
発酵コスメティクス市場は広がる消費者需要により強い成長軌道にあります。より広い発酵素材市場(食品・医薬品・化粧品含む)の規模は2024年のUSD 39.25 billionから2034年にはUSD 112.65 billionへ拡大し、CAGR 11.12%での成長が予想されています。
化粧品特化セグメントでは、バイオ発酵スキンケア有効成分市場が2025年のUSD 512.4 millionから2035年にはUSD 1,067.9 millionへ到達する見込みで、CAGR 7.6%での拡大が見られます。このセグメントの成長は2025~2030年に加速し、この5年間でUSD 1,227.5 millionの追加価値が生成される見込みです。
主要成分と製品カテゴリー
発酵化粧品市場で最も支配的な製品形態はエッセンスであり、市場シェアの60.13%を占めています。次にセラムが28.22%のシェアを占めており、これら2つの形態が市場の約90%を構成しています。
主要な発酵有効成分としては以下が挙げられます:
プロバイオティクス・ポストバイオティクス:ビフィダ発酵エキス、ガラクトミセス濾液、乳酸菌由来成分が、肌バリア機能強化、保湿効果向上、炎症抑制における利点で注目されています。14の臨床試験の分析結果、プロバイオティクス/ポストバイオティクス含有製品は肌保湿、上皮張力維持、シワ深度低減、肌微生物叢の正常化をもたらすことが確認されています。
発酵ヒアルロン酸:保水力に優れ、深部保湿と若々しい輝きの促進で特に中国消費者に訴求力があります。
発酵植物抽出物:乳酸菌、ビフィドバクテリウム由来の成分が、水分補給、アンチエイジング効果、感度低減で高評価を得ています。
第2章 東アジア市場の成長可能性
地域概況と市場規模
アジア太平洋地域の発酵素材市場は2025年にUSD 20.85 billionに達し、2030年までCAGR 8.82%で成長してUSD 31.83 billionへ到達する見込みです。この地域は発酵に対する伝統文化的理解と消費者の天然・持続可能成分への強い需要により、グローバル発酵コスメティクス市場の最大成長エンジンとなっています。
国別成長動向
中国:アジア太平洋地域内で最大の成長機会を提供しており、バイオ発酵ヒアルロン酸でCAGR 14.4%、ガラクトミセス発酵濾液でCAGR 12.8%の高成長が見込まれています。中国消費者の肌健康・アンチエイジングへの高い関心、K-Beauty/J-Beauty トレンドの影響、ならびに国家支援のバイオテクノロジー投資が成長を加速させています。消費者のプレミアム価格支払意欲は高く、2024年時点でアジア太平洋消費者の68%が発酵製品にプレミアム価格を支払う意欲を示しています。
インド:バイオ発酵スキンケア有効成分市場で最も急速な成長を示しており、2025~2035年でCAGR 19.4%が予想されています。中間所得層の拡大、プレミアムスキンケアブランド浸透の加速、ウェルネス志向消費の拡大が推進要因です。プロダクション・リンク・インセンティブ(PLI)スキーム(USD 2 billion)により、発酵ベース医薬品製造施設の建設が加速し、化粧品向け発酵素材供給体制が強化されています。
日本:バイオ発酵ヒアルロン酸でCAGR 13.2%、バイオ発酵スキンケア有効成分全体でCAGR 13.2%の堅調な成長が見込まれています。日本ブランドは酒造業者や種麴専門企業との協業により、米×麹の組み合わせを厳選し、発酵プロセスをコントロールすることで、狙った効果を確実に実現する独自成分開発を加速させています。例えば、玄米麹発酵エキスは470種以上の有用成分を含有し、天然保湿因子(NMF)生産や線維芽細胞増殖に貢献する成分として開発されています。
韓国:K-Beauty セクターの成長により、バイオベース成分開発が急速に進展しています。Daebong LSとLG Chemは2024年に提携し、100%バイオベース3-ヒドロキシプロピオン酸(3HP)を用いた化粧品開発を開始しました。K-Beauty製品の海外輸出は2023年の中国向けだけで USD 2.7 billionに達し、日本へのK-Beauty 輸入は同年USD 800 millionで前年比7.5%増となっています。
東南アジア地域の成長機会
東南アジア7ヶ国(インドネシア、タイ、マレーシア、ベトナム、シンガポール、ミャンマー、カンボジア)の化粧品市場は2024年に前年比9.8%増のUSD 127.52 billionで推移しており、直近10年で約1.7倍に拡大しています。
インドネシアは東南アジア最大市場で前年比13.8%増のUSD 51.23 billionに達し、中間所得層拡大に伴う機能性化粧品需要(美白、エイジングケア、ニキビケア)が堅調です。天然派訴求化粧品への需要が高く、伝統ハーブによる美容施術の文化的背景があります。
販売面ではEコマースが市場成長を牽引しており、Shopee、Lazada等のプラットフォーム拡大に加え、近年はTikTok Shopなどのソーシャルメディア連動型プラットフォームの存在感が高まっています。
第3章 成長ドライバー
消費者トレンド
クリーンビューティー・ナチュラル志向:有機化粧品市場単体で2020年のUSD 14 billionから2026年にはUSD 24 billionへ拡大することが予想されており、発酵成分はこのトレンドの中核を占めています。消費者の65%がクリニカルで証拠立てられた機能性利益を優先し、60%が発酵成分含有製品にプレミアム価格を支払う意欲を示しています。
スキンマイクロバイオーム関連知見:WHO の全世界皮膚健康イニシアティブによれば、80%の皮膚疾患は予防可能または管理可能で、バリア支持的ケアの重要性が強調されています。発酵有効成分(ビフィダ発酵濾液、ガラクトミセス濾液)のプレバイオティック特性が認識され、バランスの取れた肌生態系支持と感度低減をもたらすことで需要が急増しています。
科学的検証と透明性:消費者の科学性認識が高まり、発酵プロセスの透明性、原材料トレーサビリティ、クリニカル検証データの提示がブランド信頼構築の必須要件となっています。
市場構造的ドライバー
可処分所得の増加:インドネシア、ベトナムなどの東南アジア諸国はGDP成長率が年6~7%前後で推移しており、中間所得層の拡大が化粧品購買を強力に後押ししています。
Eコマース・デジタル化:アジア太平洋地域のデジタル化浸透率向上により、Tmall、JD.com、TikTok Shopなどのプラットフォームを通じたK-Beauty製品へのアクセス拡大が進展しています。
バイオテクノロジー投資:日本はJETRO統計で2024年の発酵装置輸出が18%増加し、韓国の生物工学インフラは先進的で、中国の国家支援バイオテク投資も発酵成分産業を加速させています。
第4章 直面する主要課題
規制対応の複雑性
発酵由来化粧品有効成分の規制フレームワークは地域ごとに大きく異なり、企業に多大なコンプライアンス負担をもたらしています。
欧州:EC No. 1223/2009に基づき、厳密な毒性学的評価、トレーサビリティ、安全性実証が要求されます。2025年5月、欧州委員会は新たに21の発がん性・変異原性・生殖毒性物質(CMR物質)を禁止リストに追加し、9月から効力を発するため、多くの企業の製品改処方が必須となりました。
東アジア:中国(NMPA)、韓国(MFDS)における発酵有効成分は、効力検証と持続可能な供給源の重視という地域特有の審査基準に対応する必要があります。
国際標準化:ISO 16128(ナチュラル・オーガニック化粧品ガイドライン)への準拠、GRAS(一般的に安全と認識される)原則の遵守、GMP(適正製造基準)プロトコルの検証が市場参入の前提条件となっています。
サプライチェーン不安定性
発酵化粧品産業は複数の構造的サプライチェーン課題に直面しています。
原材料供給の不安定性:ウクライナ・ロシア紛争により、世界ヒマワリ油生産の約60%を占める地域の供給が逼迫し、天然化粧品原料価格が上昇基調にあります。発酵素材企業は供給源の地理的多様化を模索していますが、調達先多層化のコスト増嵌め込みは避けられません。
インフラボトルネック:精密発酵技術の商用化に必要な大規模生物反応炉施設は北米・欧州に集中し、アフリカ・南米・新興アジア市場では不足しています。既存製薬・バイオ燃料産業向け施設の余剰容量がないため、新興化粧品企業はアクセス困難な状況が続いています。
EU 森林破壊規則(EUDR)への対応:パーム油及び誘導体に対する規制が強化され、2024年12月の規定期限延期後も、トレーサビリティ確保と適合材料供給の複雑性が継続しています。
生産コストの高さ
精密発酵技術による有効成分製造は従来の農業・動物由来製造比で著しく高コストです。
スケールアップコスト:精製糖・栄養素などの高純度入力材料、高度なバイオリアクター装置、訓練職員の必要性により、従来製造法対比で数倍のコストが発生します。これにより、精密発酵製品は価格に敏感な新興市場(アジア、ラテンアメリカ)での採用が制限されます。
インフラ投資負担:発酵専用施設建設には膨大な初期資本が必要で、ベンチャーキャピタル投資や政府補助なしに市場参入は困難です。
品質管理・標準化の課題
発酵プロセス再現性:発酵は微生物・環境条件に依存する生物プロセスであり、バッチ間での成分含有量・構成比の変動が品質管理を複雑化させます。クロロロック形成、保存期間の可変性など、従来合成成分より制御が難しい特性があります。
臨床検証データの整備:発酵有効成分の多くは伝統的使用実績を有する一方、現代クリニカルスタンダードを満たす大規模比較試験が不足している成分も多く、クレーム実証の負担が増加しています。
アレルギー・安全性懸念:酵母・菌成分への敏感肌反応、真菌性ニキビのリスク、感染リスクについて、より詳細な使用者スクリーニングと事前テストが要求される傾向にあります。
消費者認識とマーケティング課題
発酵成分の効果が広く理解される一方、以下の課題が残存します:
発酵成分の多様性(成分、菌株、プロセス)による市場混乱と消費者の理解困難
「発酵=天然=安全」という素朴な認識と科学的検証基準のギャップ
プロバイオティクス含有製品の温度管理・流通工程における菌株生存率維持の困難性
第5章 機会と戦略的展望
成長機会セグメント
パーソナライズスキンケア:AI駆動の診断、DNA ベース肌プロファイリングの発展により、カスタマイズ発酵有効成分への需要が急速に高まっています。これは高いマージン率と消費者ロイヤルティを実現するセグメントです。
プレミアム・セグメント拡大:発酵成分の科学的実証が進展するに従い、プレミアム美容製品へのインコーポレーション加速が見込まれています。特に東アジア消費者はプレミアム価格への支払意欲が高い層です。
ポストバイオティクス・セグメント:生きた菌を含まず、安定性・保存性に優れるポストバイオティクス/菌体産物は、流通環境が不完全な新興市場で大きな成長機会を提供します。
地域別戦略機会
日本:伝統発酵技術と現代スキンサイエンスを融合させる「ジャパニーズ・クラフト発酵」という市場ポジショニングが差別化要因となります。国産ブランドが主導し、酒造・種麴企業との協業により、ニッチな高付加価値セグメント創造の余地があります。
韓国:バイオベース化学成分開発で先行し、L'Oréalなど欧米大手との提携による技術移転・共同開発が進展しています。アジア太平洋への輸出プラットフォーム化による市場支配力強化が継続見込みです。
中国:消費者プレミアム化と科学的クレーム求心力により、国内バイオテク企業とグローバルプレイヤーの提携深化が加速します。Bloomage Biotech、Fufeng Groupなど国内企業の台頭も顕著です。
東南アジア:中間所得層拡大とデジタル流通革命により、プレミアム自然派スキンケア製品市場が年9~10%以上の高成長を遂行しています。現地化粧品OEM受託製造の発展とローカルブランドの台頭機会があります。
結論
発酵コスメティクス市場は消費者のクリーンビューティー志向、肌マイクロバイオーム理解の深化、科学的検証への要求により、向こう10年間で持続的な高成長を遂行する見込みです。特に東アジア(日本、韓国、中国)および南アジア(インド)は市場成長の最重要地域であり、各国の消費者特性、規制環境、技術インフラを踏まえた地域別戦略構築が必須です。
同時に、規制対応複雑性、サプライチェーン不安定性、高生産コスト、品質管理の課題は市場参入・拡大の構造的障壁となります。これらの課題克服には、大学・研究機関との連携、サプライチェーン多元化、国際標準化への準拠、およびデジタル技術活用による効率化が不可欠です。市場領導を目指す企業は、技術革新と規制適応を同時に推進し、東アジア市場の高い成長機会を戦略的に獲得する必要があります。
参考文献
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